2015年10月16日金曜日

奥田愛基さんへの脅迫事件についての声明・植村隆:植村隆名誉毀損札幌訴訟弁護団


言論活動に対する脅迫事件に強く抗議する声明 

                     2015年10月16日

植村隆名誉毀損札幌訴訟弁護団

弁護士 伊 藤 誠 一 

弁護士 秀 嶋 ゆかり 

弁護士 渡 辺 達 生 

弁護士 小野寺 信 勝 

その他弁護団有志一同

 
  安保関連法案に反対する学生団体「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)」の奥田愛基氏に、殺害を予告する脅迫状が届けられた。報道によれば、本年9月24日、奥田氏宛てで、「お前と家族を殺害する」など手書きで書かれた封書が、奥田氏の在籍する明治学院大学に届いたという。殺害予告の理由は書かれていなかったが、奥田氏がSEALDsの中心メンバーであったことに照らせば、奥田氏やSEALDsの主張や活動に批判的な者により、奥田氏やSEALDsの活動や言論妨害する意図でされたものであろう。

  奥田氏への脅迫は、植村氏が置かれている状況と共通するものである。植村氏は、1991年8月11日付朝日新聞大阪本社版社会面に、はじめて従軍慰安婦として名乗り出た金学順さんの記事を書いたが、記事の中で「『女子挺(てい)身隊』の名で戦場に連行」と書いたことで、一部週刊誌やインターネット上で激しい誹謗中傷に晒され、植村氏本人や家族への殺害予告や植村氏が勤務する北星学園大学関係者への脅迫が行われている。

  また、本年6月ころには、安保法制を合憲と意見表明した憲法学者に対してもインターネット上に殺害を予告する書き込みがなされている。

  自己の主義主張や嗜好に反する言論行為に対して、言論ではなく、暴力をもって対峙して、その言論をなきものにしようとする点は問題である。民主主義社会は、相反する考え方や意見を闘わせることによって成熟していくものである。いかなる言論であれ暴力をもって封殺する行為は、表現の自由の否定であり、ひいては民主主義の破壊である。私たちはこのような行為は断じて許すことはできない。

  また、奥田氏と植村氏の事件では、在籍する大学に脅迫文が届けられている。いずれも外部から大学に圧力を与える点で共通している。明治学院大学は今回の事態を受けて「言論の自由に対して許しがたいこと」と声明を出したが、その姿勢からは暴力に屈しない決意が伺われ、高く評価する。大学には、大学の自治や学問の自由という崇高な理念は守られなければならない。そのために我々にできることがあれば協力は惜しまない。

  これらの脅迫事件は、植村氏が置かれた状況と同様に、日本社会を覆う排他と不寛容の空気を象徴する事件であり、自由や民主主義への強い危機感を抱かざるを得ない。私たちは、暴力により自由と民主主義を破壊しようとする者たちと対峙することを決意するとともに、自由や民主主義を愛する市民にともに声をあげることを求める。
                               以 上

植村隆さん(元朝日新聞記者)を応援するサイトです。

1991年に書いた「従軍慰安婦」に関する2本の署名記事。23年後に「捏造」のレッテルを貼られ、植村さんは言論テロとも言える攻撃を受けています。

非常勤講師として勤務する大学へも脅迫状や大量の抗議メール・電話が届き、高校生の娘さんはネット上で「自殺に追い込め」など脅しの言葉にさらされています。 言論で対抗してもデマの拡大は止まりません。

そこで、汚名を晴らし家族らの人権を守り、大学の安全をとり戻すため、2件の名誉棄損裁判を提訴しました。2015年1月、週刊誌で「捏造記者」とコメントした西岡力氏とその発行元を被告に東京地裁へ。同2月、西岡氏の言説を拡大し脅迫を肯定するような記事まで書いた櫻井よしこ氏と掲載した週刊誌などの発行元3社を被告に札幌地裁へ。

「植村応援隊」はこの裁判や植村さんの言論活動を応援するために、1月30日に結成されました。ぜひ一緒に応援してください。