奥田愛基さんへの脅迫事件についての声明
2015年10月2日
植村隆東京訴訟弁護団
弁護士 中山 武敏
弁護士 黒岩 哲彦
弁護士 海渡 雄一
弁護士 角田 由紀子
弁護士 神原 元
外 弁護団一同
私たちは、元朝日新聞記者植村隆氏が週刊文春の記事を巡って同誌を発行する株式会社文藝春秋他1名を提訴した事件の弁護団である。
報道によれば、本年9月26日、奥田愛基さんとその家族に対する殺害予告が、奥田さんが在籍する明治学院大学に届けられた。殺害する理由や政治的主張は書かれていなかったというが、奥田さんが安全保障関連法に異を唱えてきた学生グループ「SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)」の中心メンバーであることからすれば、奥田さんの活動を妨害する目的での犯行の可能性がある。そして、奥田さんがこのことをツイッターで公表すると、ツイッターには、犯罪を賞賛したり、奥田さんに意見を変えるよう求める意見が多数書き込まれた。SEALDsの他の学生メンバーもインターネットに暴言や中傷を多数書き込まれる被害に遭っているという。事件と同時期に「週刊新潮」が奥田さんの生い立ちや父親の活動を批判的に報道しているが、この報道はバッシングをさらに煽りかねない危険を孕んでおり見過ごせない。一連の事態は、民主主義の根幹である言論の自由に対する挑戦であり、許しがたいと言わなければならない。
奥田さんやSEALDsのメンバーが受けた被害は、植村隆氏が受けた被害と酷似している。植村氏は1991年に書いた慰安婦問題の記事がきっかけで週刊文春から「捏造記事」などの中傷を受け、これに影響された人々から、ネットでの嫌がらせ、職場や家族への脅迫を受けた。批判する相手の家族関係を調べ上げて攻撃する週刊誌の手口も共通しているし、家族に対してまで殺人を予告する脅迫犯人の手口も酷似している。このように、奥田さんやSEALDsのメンバーが受けた被害は、植村氏が受けた被害と同様、日本社会が陥っている危機的状況を反映したものとして、強い懸念を抱かざるを得ない。
このような危機を打開するためには、広範な市民が、自由と民主主義を守るという一致点で連帯し、これを脅かす如何なる脅しも許さないという断固たる姿勢を示すことが必要である。私たちは、捜査機関に対し、奥田さんの事件についての徹底的な捜査を求めるとともに、自由と民主主義を求める広範な市民が、自由の敵である脅迫者たちに対して、ともに声を上げていくことを呼びかけるものである。
以上